自民党の鈴木総務課長は、10月15日の記者会見で、
天皇陛下が即位を宣言される10月22日の「即位礼正殿の儀」に合わせて行う恩赦で、
対象者が約55万人と見込まれると明らかにしました。
【恩赦 55万人程度の見込み】https://t.co/JTXc0yvF3M
政府は15日の自民党総務会で、天皇陛下即位を受けた恩赦について、55万人程度が見込まれると報告した。対象は軽微な犯罪に絞られる方向。
— Yahoo!ニュース (@YahooNewsTopics) 2019年10月15日
恩赦って聞きなれない人もいると思います。
今回は恩赦について情報をまとめてみました。
恩赦ってなに?
恩赦とは行政権により国家の刑罰権の全部又は一部を消滅若しくは軽減させる制度のことを言います。
権限は行政機関にある例が多いですが、国によっては議会(立法機関)に一般的な恩赦の権能を与え、
行政機関には個別的な恩赦の権能を与える仕組みになっているところもあるそうです。
現在、日本だけでなく、共和制・君主制、大統領制・議院内閣制などを問わず、多くの国家で行われている制度です。
日本では、大日本帝国憲法において、恩赦は天皇により行使される事項であると定められていました。
その後現在の日本国憲法においては、恩赦の決定は内閣が行い、恩赦の認証は天皇の国事行為として行われるものと定められました。
また、その具体的な内容については、恩赦法に制定されています。
恩赦法には、以下の通り恩赦の種類が定められています。
「大赦」
一定の犯罪者全体について、刑を消滅させるもの。
有罪の言い渡しを受けた者についてはその効力が失われ、受けていない者に対しては公訴権が消滅する。
「特赦」
有罪の言い渡しを受けた者のうち、特定の者について有罪の言い渡しの効力を消滅させるもの。
「減刑」
刑を減軽すること。
刑の言い渡しを受けた者に対して,政令で罪もしくは刑の種類を定めて行う場合 (一般減刑) と,
刑の言い渡しを受けた特定の者に対して行う場合 (個別減刑) とがある。
「刑の執行免除」
刑の言い渡しを受けた特定の者に対して行われる。
「復権」
有罪の言い渡しを受けたため,法令の定めるところにより資格を喪失し,または停止された者の資格を回復するもの。
なお、今回行われる恩赦のように、国の慶弔時に合わせた恩赦は、天皇、皇后両陛下のご結婚以来26年ぶりとなるそうです。
対象者は誰?自己破産者も関係ある?
今回発表された対象者55万人というのは、どのような人が対象となるのでしょうか?
重大犯罪を犯して刑に服している人が釈放されるなんてこともあるのでしょうか?
政府は被害者の心情に配慮すべきだとの世論を踏まえ、恩赦の対象を軽微な犯罪の軽減や、復権に限定する方向で検討しているようです。
恩赦により自己破産した人が失われた権利も戻ってくる?なんていう質問がネット上にありました。
まさか!と思い調べてみると、どうやら「復権」という言葉には、恩赦で使われる復権の他に、
自己破産者が破産宣告によって失った公私の資格を回復すること、という意味で使われることもあるそうで、
混同されやすいみたいです。
自己破産でいう復権は、恩赦で使う復権とは別物です。
そもそも自己破産は犯罪ではないですからね。
※自己破産と恩赦は全く関係ありません。
これまで恩赦になった例は?
これまで恩赦になった例はあるのでしょうか?
特に重大犯罪で有罪になった人が、恩赦の対象者になった例があるか気になりますよね。
直近で恩赦により死刑囚に減刑が認められたのは、1975年でした。
福岡事件という事件の実行犯に認められたそうですが、このときの恩赦は今回予定されている恩赦とは違い、
死刑囚自ら中央更生保護審査会に対して恩赦を上申し、審査会で認められたことによる恩赦だったそうです。
どうやら、戦後の恩赦は、「法律変更などによる量刑不均衡の是正のための救済」や、
「社会的影響のないレベルの罪や社会復帰後に何ら問題を起こしていない人に対しての復権」
が中心となっているようで、皇室に慶事・弔事があった時の恩赦で重大犯罪の恩赦が行われることは稀なようです。
なぜ恩赦がおこなわれるのか?海外でもある制度?
さて、なぜ恩赦という制度が存在するのでしょうか?
冤罪という可能性はあるにせよ、きちんと裁判を経て有罪になり、量刑を言い渡されているはずなのに、
それが軽減される必要はあるのでしょうか?
恩赦が必要な理由としては主に2つ挙げられます。
1つ目は、誤判の救済のための恩赦です。
冤罪とわかった事案でも、手続き上それを立証して刑を取り消すのはものすごい時間と労力が必要になるため、
恩赦により救済できるようにする、というものですね。
2つ目は、社会の変化や事情変更により基づく恩赦です。
有罪判決が出た当時は罪とされていたことでも、時代の変化につれ、その時の判断の妥当性が認められなくなることがありえます。
このように、一見不可思議な制度に思える恩赦も、必要だと考えることもできます。
現に、恩赦は日本だけでなく、アメリカ、韓国、タイ、ブラジルなど、行われる方法など細かい違いはありますが、
いろいろな国で設けられている制度です。
これを機会に、皆さんも恩赦について考えてみませんか?
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