こんにちは、どすこいライターのちゃんこです。
お金がなくて家にいるのに、花粉センサーがやたら敏感に働いて困ってしまいます。
さて、今日は家に居ながらにして文学的な感性を養える・・・かもしれない、ノーベル文学賞受賞作家の作品をご紹介します。
その小説とは・・・
『わたしを離さないで』!!
2017年にノーベル文学賞を受賞した、カズオ・イシグロの作品です。2005年発表の作品で、2010年にイギリスで映画化、さらに2016年に日本でテレビドラマ化されています。
あらすじ
キャシーは31歳になり、もう10年以上も介護人として「提供者」たちの世話をしている。
キャシーが育ったのはヘールシャムという施設。キャシーが担当した「提供者」の中には、同じくヘールシャムで育った人もいた。
キャシーは介護人として働きながら、ヘールシャムの懐かしく奇妙な思い出を振り返る。
閉鎖的で外出することが許されない環境のヘールシャム。
ヘールシャムには、キャシーと同じように家族がいない子どもたちがたくさん生活していた。
気が強く自分が一番のルース、大らかで癇癪もちのトミー。
毎週おこなわれる厳しい健康診断に、保護官と呼ばれる教師たちのぎこちなさ。
図画工作の授業に力を入れていた授業。
そして、ヘールシャムの子どもたちが作った図画工作の作品を選定し、定期的にどこかへ持っていく謎のマダム。
ヘールシャムで暮らしていたときにはわからなかったこの生活の真実を、介護人になってから知ることとなったキャシーとトミー。
その真実は、キャシーたちの儚い希望を打ち砕くものであった・・・
ちゃんこ流おすすめポイント
さて、ここからは『わたしを離さないで』のちゃんこ流おすすめポイントをご紹介します。
キャシーの独白によって物語が進む
『わたしを離さないで』は主人公キャシーが過去を独白するかたちで物語が進む作品です。
キャシーはいろいろなことを細かく描写し、その語り口は非常に淡々としています。
そのため、この作品の世界が、わたしたちが暮らす現代の世界とは違う、仮想の世界にもかかわらず、わたしたちはキャシーたちの暮らしぶりを容易に思い浮かべることができるのです。
また、読み手であるわたしたちは、当事者目線でありつつも、冷静に客観的にこの作品を読み進めることができます。
キャシーを含めたヘールシャムで育つ子どもたちは全員、ある重大な使命をもって育てられているのですが、その使命の重大さと当事者であるキャシーの淡々とした語り口が、良い対比を生み出しています。
伏線回収と独特な読後感
さて、わたしたちはキャシーの視点でこの作品を読み進めますが、幼いころのキャシーと同じく、わたしたちも何も知らない状態で物語が始まります。
キャシーが語る幼いころの親友の話や、授業の話、なんてことない日常の一場面など、もしかすると最初は退屈に感じるかもしれません。
ところが、だんだんとヘールシャムで暮らす子どもたちの真実が見えてくると、キャシーの日常の話はすべてつじつまが合う、意図されたものだとわかります。
すべての謎の真実がわかる、マダムの家でのシーンとその帰り道のクライマックスシーンでは、相変わらず冷静に対処しようとするキャシーに代わり、読み手の私がトミーと一緒に叫びたくなってしまいました 笑
けっして、伏線回収ですっきり爽快!という物語ではありません。伏線は回収しますが、回収した先の真実が、結局キャシーたちにとってはどうしようもない真実だった、ということなのです。
読み終わった後に、ふと昔の自分を思い出しました。
昔、高校生のころの私は、アイデンティティの確立で悩んでいたことがありました。
「自分は何のために生まれてきた?」と毎日考え、その答えがわかれば、生きている意味がわかっていいのに、なんて思っていたのです。
でももし、生きている意味があったとして、それがキャシーたちと同じだったら・・・?
自分の生きている意味が明確で、それのために育つということは、選択の自由がないという状態なのだと今さらながら気づかされ、ハッとしました。
いろいろと考えさせられる作品です。もやもやした読後感を味わいたい方にはおすすめです 笑
おわりに
『わたしを離さないで』は、読み終わることさえできればとても印象に残る作品だと思います。
さすが、ノーベル文学賞受賞作家の作品!ということでしょうか?笑
もし最初のほうを読んで、退屈でくじけそうになった人は、先にヘールシャムの子どもたちの使命を知ったうえで読み進めると、読みやすくなると思いますよ!
ということで、今回は『わたしを離さないで』を紹介しました。
ではまた!
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